本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1912（明治45 / 大正1） 年5月14日

　五月十四日　火　半晴　医師ノ相手ニテ登校叶ハズ（東美校）　午後植物ノ手入ヲナシ又草原ノ写生ヲナス　夕刻杉浦君来ル　予テ注文セル火鉢台持参　夜佐野ト飯島氏外ニ姉上様　兼清来訪

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1912（明治45 / 大正1） 年5月15日

　五月十五日　水　晴　議員選挙　芳子殿吐血　容体益面白カラズ　午後四時過マデ医師ノ相手ヲナス　五時頃投票ニ出掛ケタリ　途中一寸橋口家ニ寄ル　夜八時頃佐藤均来リ某富豪ノ展覧会計画ニ付語ル　今暁三時杉浦方ニ強盗押入タル由ヲ聞ク

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1912（明治45 / 大正1） 年5月19日

　五月十九日　日　晴　午前十一時赤阪小学校創立四十年記念会ニ出席ス　宇都宮少将　渡瀬博士　山岡中佐　名取先生等来会　午後三時頃帰宅　五円寄附　訪客　京都菅善三郎　図案家笠原氏　荻原君

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1912（明治45 / 大正1） 年5月20日

　五月二十日　月　晴　訪客　平子　渡辺　中澤　小林ノ諸氏　中　小二氏ハ展覧会ノ相談也　名称ハ光風会ト云フニ決ス　六時半ヨリ有楽座ニ小奈良ヲ聴ク　荻原君及武田クメ子同伴

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1912（明治45 / 大正1） 年5月21日

　五月二十一日　火　雨　午前美術学校ニ登校　午後一時半ヨリ新富座ヘ回ハル　Michel Strogoff ヲ覧ル　村田　月岡ノ二氏ニ面会シ又月岡氏ノ紹介ニテ始メテ中伊氏ヲ知ル　同伴者荻原　武田外ニ有楽座ノ浪子女史

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1912（明治45 / 大正1） 年5月25日

　五月二十五日　土　晴　午後三時ヨリ大森海岸清花園ニ於テ牛呑会開催　来会者二十一名　京橋南金六町　Restaurant Français 石井君外二名ノ送別午餐会　午前十一時ヨリ十二時迄女学部授業　光風会ニ旧白馬会ノ財産ノ一部ヲ貸与スルノ件ヲ可決セリ

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1912（明治45 / 大正1） 年5月26日

　五月二十六日　日　晴　訪客　名越　原歯科医　高木誠一　右十二時半頃マデノ中　姉上様　孝　近清　大槻　右夜分　訪問　足立寛翁　午後五時頃　又神田三才社及正直堂ニ立寄ル

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1912（明治45 / 大正1） 年5月27日

　五月二十七日　月　半晴　午後一時半ヨリ三時迄女学部　夕方泉水ノホトリニテ庭園ヲ描ク　夜三越ヨリ展覧会ニテ売却セル画ノ代金二百三十四円送リ来ル　夜山田　三浦ノ二学生来訪

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1912（明治45 / 大正1） 年5月28日

　五月二十八日　火　曇　四時頃ヨリ細雨　来訪者　磯谷　小川一眞　藤島　白尾フキ　鈴木鼓村ノ諸氏　午後南洲翁ノ肖像ノ下図ヲ作リタレドモ意ノ如クナラズ　遂ニ徒労ニ帰ス

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1912（明治45 / 大正1） 年5月29日

　五月二十九日　水　曇　訪客　渡辺　荻原　平子ノ三氏　渡辺氏ニ謝礼トシテ金五十円贈ル　平子ハ日光見物ヨリ帰リタリトテ夜十一時頃来リ今夜一泊ス　午後庭園図ノ修正ヲナシ夜ハ書庫内ノ群猿ヲ一函ノ中ニ蔵メタリ

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1912（明治45 / 大正1） 年5月30日

　五月三十日　木　晴　小西氏ニ礼金三十円ト土耳古煙草二函ヲ贈ル　午前絵之具ヲ整理シ午後ハ又南洲翁ノ肖像ヲ描ク　今度モ亦失敗シテ夕刻塗抹セリ　晩餐後柴崎　内野二子ノ来訪ニ接ス　後板垣伯ノ自由党史ヲ読ム

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1912（明治45 / 大正1） 年5月31日

　五月三十一日　金　曇　小川氏ニ父上御筆ノ歌ヲ贈リ又日比氏ニ贈ル可キ油絵由井ケ浜ノ夕日ノ図ヲ久保田氏迄届ケタリ　去二十六日暇ヲ取リタル武田看護婦来訪　即チ礼物ナド与ヘタリ　葵橋研究所ニ於テ午前午後ノ授業ヲナシ帰宅後河島醇氏ノ肖像ヲ描ク　夜平子氏来リ一時半マデ語ル

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1912（明治45 / 大正1） 年6月1日

　六月一日　土　晴　午前十一時過ヨリ女子部ニ登校　午後庭前ニテ君子ヲモデルトシテ日向ノ色ヲ研究ス　会々来客ノ為ニ中止セリ　先ヅジヤパンガゼツトノ中川氏　続イテ中澤　山本　三宅ノ三氏来訪　平子ト共ニ晩餐　食後磯谷ノ番頭佐藤来ル　後櫻井ト画室ニ於テ語リ又少シク室内装飾ノ書ヲ読ム

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