六月十三日 (欧洲出張日記) 今日は丁度ベンガル湾を横切つて居る そうしてスマトラ島とセイロン島との真中位の処を行く 此の辺の海の深さは四千メートル近くだ 即ち我一里位のものだ 船の動く事ハ矢張昨日のやうだ 昨日ハ縦ゆれが多かつたが今日は横の方だ 風も少しく加つて来て西南の方から吹く 之れが彼の有名なムーソンの端くれだらうと思ふ 夜窓から水を打ち込だ 寒暖計ハ三十一度位の処だが風が有る為めに甲板に居るとさほど暑さを感じない 夜寝てから汗をかいて手拭をびしよぬれにすることは不相替だ 兎に角毎日体がだるくていけない
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本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。
九月二十五日 月 朝曇 晴 (鎌倉) 入浴ス 未終時太田子飯島ノ風景画ヲ持参ス 夫レヨリ仕事ニ掛リ附属品ヲ改作ス 夜今日の印度ヲ読ム