1913（大正2） 年3月22日
三月二十二日 土 専修科最後ノ授業トシテ午前及午後女学部ニ出勤セリ 又宇佐川千代子殿ヘ草萌図ヲ贈ル 夜小川一眞君来訪 又研究所幹事補川上五郎帰郷ニ付暇乞ノ為来ル
本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。
1913（大正2） 年3月23日
三月二十三日 日 曇 十二時過岡田秀嶺君 武井氏ノ作品ヲ持参来訪 後チ庭ノ倒レ木ヲ起シ又画室ニ入ル 夕刻ニ至ル 夜木田氏ヲ呼ビ研究所幹事ノ件ニ付相談ヲナシタリ 一時二階ヘ昇ル
1913（大正2） 年3月24日
三月二十四日 月 曇 夜雨 懸賞写真審査ノ為午後半日三越ニテ暮ラス 夜須山君来訪
1913（大正2） 年3月25日
三月二十五日 火 雨 照子雙葉女学校ノ卒業式ヘ赴ク 二時頃近清君来 即チ読書ヲ止メテ語ル 夜九時過大槻子モ来ル
1913（大正2） 年3月26日
三月二十六日 水 曇 午後河島氏ノ肖像ヲ画ク 夕刻和田君来ル 夜研究所生徒五六名来ル 又姉上様子供等ト御入来 荻原氏モ来合セ大入也 一時過寝ニ就ク
1913（大正2） 年3月27日
三月二十七日 木 晴 葵橋研究所午前午後ノ授業ヲナス 三時頃帰宅 竹澤君ニ面接 大阪拓博ノ設計ニ付話ヲ聴ク 後チ足立翁肖像画ノ修正ヲナス 夜画室ニ於新着ノ美術書ヲ見ル
1913（大正2） 年3月28日
三月二十八日 金 晴 一時過久米来訪 同道シテ安達峯一郎氏ヲ永田町二丁目ノ邸ニ訪ヒ一時間半程語レリ 夕刻近清君見ユ 夜ハ末松子爵ノ為評言ヲ作ル
1913（大正2） 年3月29日
三月二十九日 土 午前九時半女学部卒業式 午後二時上野美校卒業式 伊香保ナル卒業生ノ祝宴ニ臨ミ五時半精養軒新聞記者招待会ニ出席 十二時頃帰宅
1913（大正2） 年3月30日
三月三十日 日 学生河上丈二ノ兄来ル 同氏去リ山井大尉来リ正午ニ至ル 午後亦学生鮫島外一名及菊地君来ル 夜又学生谷口及荻原氏来ル 八時半ヨリ赤阪股野氏ヲ訪問シ十時迄語レリ 夫レヨリ病気見舞トシテ家村氏ヘ回リタリ
1913（大正2） 年3月31日
三月三十一日 月 晴 磯谷掛取ノ為来リ共ニ午餐ヲ取ル 午後宇佐川千代子殿卒業ノ礼トシテ来訪 四時頃ヨリ夕刻マデ画室ニ籠レリ 夜沼津北村ヘ見舞状ヲ発シ宮島 眞野 森岡ノ三氏ニ面接 一時過ニ至ル
1913（大正2） 年4月1日
四月一日 火 晴 桜花開ク 午前十一時頃ヨリ上野博物館ヘ赴ク 帝室技芸員作品展覧会場ニ於テ小川君ニ遇ヒ共ニ精養軒ニ寄ル 帰途宮内省ニ次官ヲ訪フ 不在 夜近清君来 浪花節ヲキク
1913（大正2） 年4月2日
四月二日 水 十時宮内省ニ至リ河村次官ニ面会 小川氏ト日本倶楽部ニ於テ暫時語レリ 同氏推薦ニヨリ此ノ倶楽部ヘ入会ノ件本日可決セル由ナリ 午餐ニ父上御入来 二時過ヨリ夕刻マデ上野学校試験成績調ヲナシタリ
1913（大正2） 年4月3日
四月三日 木 晴 午前学生大阪人黒田新来ル 午後一時過ヨリ青山斎場ニテ執行ノ家村覺三氏ノ葬儀ヘ赴ク 一旦帰宅 更ニ紀尾井町前田正名翁ヲ訪問セリ 夜照ハ有楽座ヘ出懸ク 余ハ明日提出ノ画題ヲ選ム
1913（大正2） 年4月4日
四月四日 金 晴 午前十一時鉄道院ヘ行キ嘱託ノ辞令ヲ受ク 午後一時勧業展覧会々議ニ出席 二時上原六四郎君ノ葬儀（谷中斎場）ニ名刺ヲ置キ又勧展ノ審査ヲ了ヘタリ 夜松本 五味 龜山外二名来ル
1913（大正2） 年4月5日
四月五日 土 晴 桜満開 午前新日本記者楠山正雄氏入来 午後河島氏ノ肖像画ヲ描ク 頭部ノ修正ニ失敗セリ 夜営口ヨリ帰朝セル白尾君来訪 後荻原 大槻ノ二氏ラ来レリ
1913（大正2） 年4月6日
四月六日 日 晴 風アリ 花散ル 午前中床次 三浦 與倉ノ三氏ヲ歴訪 皆不在 午後ニハ二時ヨリ又河島氏ニ取掛ル 夕刻少シク菊ノ植付ヲ為シ夜宮島熊三君ト画談ヲナセリ
1913（大正2） 年4月7日
四月七日 月 晴 亦風アリ 花庭中ニ散敷ク 午前中ハ花壇ノ見回ハリヤ挿木ナドヲナス 午後河島 足立ノ二肖像ノ修正ヲ幾ンド終了セリ 夜松本氏陳列館案ヲ持参 又兼清来リ十二時半ニ至ル
1913（大正2） 年4月8日
四月八日 火 雨 気候又俄ニ寒クナル 午前中温室ニ植物ノ整理ヲ試ム 午後和田君来リ色々打合ヲナシタリ 夜安藤復藏美術館株式案ヲ持参 外ニ学生六名来ル 及第セルモノ落第セルモノ又洋行ノ望アルモノ等也
1913（大正2） 年4月9日
四月九日 水 朝雪マジリノ雨フル 夜半五十度 旧三月三日 朝仏国ヨリダリヤ球届ク 金山子ノ贈与品也 午後岡野子及仲氏母子来訪セラル 夕刻請求ニ依リ小川氏ヲ訪問シ例ノ帝技ノ資格問題ヨリ生ジタル面倒ヲ聞ク 夜曾我ノ家一座ヲ見物セリ
1913（大正2） 年4月10日
四月十日 木 晴 常緑園ヨリダリア球届ケ来ル 直ニ仏国産ノモノト共ニ仮植ヲナサシム 午後三好博士肖像ニ着色ス 夕刻父上様御入来 晩餐後研究所ニ於テ講義ヲナス 仲 大槻来訪 一時ニ至ル