1894(明治27) 年11月28日


 十一月二十八日 (従軍日記)
 朝樺山氏ニ行 昨日の結果の話をしたら宮様がお立ニ為るから其船で行ようニするがいゝとてかくて宇品の通信部長の松本氏とかへ添書をやらんとて副官の鈴木と云人ニ頼み呉れられたり 十一時頃ニ大本営事務所へ行 鈴木氏ニ逢つたら松本氏ニハ既ニ話して置たから添書ニハ及バず 船ハ明日午後三時発の豊橋丸と云ふニ乗る様ニす可し 山階宮殿下が即ち其船ニて御渡清被遊からそれニ乗れバ都合よからん云々 アー明日立つ事と為るといそがしいぞ 其処で注文して置た Sac d’artiste の直しをいそがせるやら靴屋に走るやら大騒ぎサ 昼めしニビゴの処でお別れの御馳走ニ為る 四時頃から川野の処ニ行
 木村を引出し三人連にて遊廓の直そばなる大きな湯ニ行 夫レから茶屋ニ出懸く 此処ニ別れの酒宴を開く 東京の友達がよこした大金にての御祝の手紙を取り出してよみ其返事として戯の画を久米と合田ニ送る