1894(明治27) 年11月29日


 十一月二十九日 (従軍日記)
 朝暇乞として樺山 川上 寺内 村田の諸氏を訪ひたり 樺山中将よりハ餞別として茶壺と干魚の入りたる壺を貰ふたり 合田より送り来たる木板の見本を紀念の為村田氏へやりたり コニヤク 靴下等の買物をして返り直ニ入れ付を始む 間もなく木村 川野及川野氏の友人にて同じく通訳官と為て居る某尋ねて来た 皆荷造の手伝をしてくれた そうこうする内ニ時間が段々せまつて来るから酒肴を出さしむ 少し飲だり食たりして居る内ニ時が来てめしハ食ださずして立つ 前の四人ニビゴが送つて来てくれた 宇品で宮様のお立ちと云ので軍人の人達随分沢山見へた 樺山中将 寺内少将等も見えた 寺内少将ニハ船迄お見送りせられた 船ハ予定の如く三時頃出帆