1891(明治24) 年5月29日
五月二十九日附 グレー発信 母宛 封書
みなみなさまおんそろひおげんきのはづおんめでたくぞんじあげまいらせ候 わたくしことハだいげんきにてべんきようをいたしてをりますからごあんしんくださいまし このごろハやつぱりいなかニをりますがまいにちおてんきがわるいのでそとでおもふようニべんきようをすることハできませんよ こんどハなんニもかいてあげるほどのことハございませんよ こないだひまのときニまたまたくさぞうしのつゞきをすこしうつしましたからおくつてあげます まだなかなかかんぢんなおもしろいところニハいきませんよ またそのうちニつゞきをかいてあげます けふまたしんぶんニでたにつぽんのじゆんさがろしやのひとをきるところのゑをおくつてあげます こちらのやつハにつぽんのじゆんさがどんなようすをしてをるかさつぱりしらないのです それからしんぶんニかいてあるのニハそのじゆんさのやつがふいニろしやのひとニきりかけたところがそのろしやのひとのいとこのぎりしやといふところのひとがつゑでそのじゆんさをうちたをしてしまつたとかいてございます いくぢのないじゆんさですねへ せつかくいのちをはめてやるのニつゑで一とうちニうちたをされるなんかんといふのハまことニこまりますよ こんどハこれぎり めでたくかしこ
母上様 新太拝
せつかくおからだをおだいじニなさいまし めでたしめでたしめでたしめでたし