本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1899(明治32) 年12月3日

 十二月三日(京都出張日記) 七時半頃ニ目をさましねながらものごと云て八時半頃に起る 松波ハ M.M.会社ニ出かけて切手の談判をして荷物積込の都合をつけて来た 朝めしハ皆一緒ニ食ふ それから久米が一人で西村ニ置てあつた荷を船ニ積ミ込ませて帰へる これから皆で唐物屋ニ買物ニ出かけた オレハシャツだのコルだのを買つた 此ノ時松波が十円でおもちやの気車を買ふ約束をした 皆で大笑して之れハ zinfandel 以上の景気だと云た 菊 岩 吉の三人ハ東京へ帰る 昼めしニハ合 松 久 佐と五人丈ニ為つた めし後ニハ宿屋の二階で話しをした とうとう松波が気車の買物をやめる事と為る 四時二十七分の気車に乗る事と為り皆とステーシヨン内の buffet で珈琲をのみ wine をのみ別れをした 佐 松 合ハ東京へ帰る オレなどの気車が少し先きニ出た 六時頃に大磯駅ニて下車 町を散歩して千鳥と云ふ小さい料理屋ニ這入り食事す 七時四十三分の直行気車ニ乗る 久米ハ横にて長崎までの通し切符を買ふ 今日横で新らしいシヤツを買つたから東京から持て来た古いシヤツとカラハ合田ニ頼で東京へ返へす

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