1918（大正7） 年8月14日
八月十四日 水 晴（鎌倉） 今朝ハ風ノ具合ナド大ニ秋メキタリ
本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。
1918（大正7） 年8月15日
八月十五日 木 薄日 夕刻遠雷 又小雨（鎌倉） 久米君信州別所温泉ヨリ葉書ヲ寄ス 君子ト飯島ノ鍾乳洞ヲ見物ス
1918（大正7） 年8月16日
八月十六日 金（鎌倉） 七時半頃ヨリ君子ト散歩シ五社神社ニ参詣ス
1918（大正7） 年8月17日
八月十七日 土 晴 東京ニテ九十ニ度八分（鎌倉） 夕刻坂井義三郎君入来
1918（大正7） 年8月18日
八月十八日 日 晴 暑気昨日以上ナルガ如シ（鎌倉） 風俗図ノ調ヲナシ女学部用参考図追加一五図ヲ選定ス
1918（大正7） 年8月19日
八月十九日 月 半晴（鎌倉） 午前八時四十七分鎌倉発 午後八時四十分新橋発 野村氏ノ文案ニ付修正ノケ所等ヲ委シク櫻井ニ申付 女学部用風俗図十五枚製作ノ件
1918（大正7） 年8月20日
八月二十日 火 晴（鎌倉） 午前姉上様御入来
1918（大正7） 年8月21日
八月二十一日 水 曇 夜月明（鎌倉） 櫻井ヘ電報ヲ発シ明日ノ小島憲之君ノ葬儀ニ会葬ノ事ヲ依頼ス
1918（大正7） 年8月22日
八月二十二日 木 晴（鎌倉） 午前靈山氏例ノ寄附金ノ件ニ付入来 即刻金一百円寄附ス
1918（大正7） 年8月23日
八月二十三日 金 晴（鎌倉） 午前十時頃五島健三江ノ島行ノ途次帰任ノ暇乞旁来訪 午餐ニ留メテ午後一時半頃去レリ
1918（大正7） 年8月24日
八月二十四日 土 晴（鎌倉） 此頃ハ大概七時ニ起出ヅルヲ例トシタリシガ今朝ハ一旦目ヲ覚マシテ後チ八時近クマデ眠レリ 久米 菊地宛別所温泉ヘ向ケ返書ヲ発ス（絵葉書）
1918（大正7） 年8月25日
八月二十五日 日 晴（鎌倉） 午前十時前ヨリ俥ニテ円覚寺ヘ出掛ク 例年ノ通リ本月二十二日ヨリ二十八日マデ寺宝ヲ従覧セシムレバナリ 夜照ト長勝寺路ヨリ迂回シテ岡村ノ裏道ヲ通リテ帰ル
1918（大正7） 年8月26日
八月二十六日 月 晴（鎌倉） 午後谷口来訪 二時間許語ル 隆女来リ十一時過マデ雑談 同女ニ大木和三郎ヘノ伝言ヲ頼ム
1918（大正7） 年8月27日
八月二十七日 火 晴（鎌倉） 夜前ノ上村邸内ニ借家セル原信子ヨリ使来ル 福岡ノ和田三造ヨリ Le Livre de L’Art ou Traité de la Peinture 送リ来ル 先頃借用ヲ申入レタルモノナリ
1918（大正7） 年8月28日
八月二十八日 水 雨（鎌倉） 三造ト中條君ヘ（手紙ニ対シテ）何レヘモ電報ヲ発ス 午後四時頃原信子来訪 一時間許語ル 夕刊ハ台風襲来ノ警報ヲ発ス
1918（大正7） 年8月29日
八月二十九日 木 晴（鎌倉） 昨夜ハ幸ニ嵐ハ無ク今日モ終日無事ナリ 夜例ノ歌妓信子来リテ種々芸壇ノ話ヲナセリ
1918（大正7） 年8月30日
八月三十日 金 風雨（鎌倉） 愈々荒模様ナリ 午後ハ全ク嵐ノ体トナレリ
1918（大正7） 年8月31日
八月三十一日 土 晴（鎌倉） 午前九時頃平子 新納 櫻井ノ三名打連レテ来着ス 信子ヨリ晩餐用トシテ海老料理ノ寄送ヲ受ク
1918（大正7） 年9月1日
九月一日 日 晴 夜半小雨（鎌倉） 誠ニ平隱ナル二百十日也 信子ヘ答礼ノ印マデニ少許ノ芋ヲ贈リタルニ瀬戸ニテ製シタル小鳥ノ鳴声ノ如キ音ヲ自動的ニ発スル小徳利ヲ寄セ更ニ自身玄関迄来テ此ノ奇器ノ説明ヲナセリ
1918（大正7） 年9月2日
九月二日 月 晴（鎌倉） 製作ノ為メニ考案ヲ費ス 幸一図ヲ得タレドモ俄ニ之ヲ確定トハ為シ難シ 今一段ノ工夫ヲ要スルハ勿論ナリ 岡村三郎作品ヲ持参ス