1904(明治37) 年12月13日 Tuesday


十二月十三日 雨

今日は雨中の掛け持は大困難である。考古学はカルデヤの初め大分胡魔かしの方であつた。夕方雨は変じて雪となる。十二月に雪を見るのは近来にない珍らしい事だ。天帝が満州滞陣の困苦を都人に知らせるためだと迷信家は思ふであろう。昨日から旅順敵艦壊滅の報が来る。二〇三高地占領の結果船艦繋留の位置が充分に観測されるので最早遁るゝ所はなくなつた訳であるそうだ。何しろ戦闘艦巡洋艦の重なるもの六七艘やられたのは先々目出度き方である。是で総攻撃不成功の埋め合せはついたといつてもよかろう。

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例)「1904/12/13 久米桂一郎日記データベース」(東京文化財研究所) https://www.tobunken.go.jp/materials/kume_diary/872341.html(閲覧日 2024-05-05)