本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1887(明治20) 年1月21日

 一月二十一日附 パリ発信 父宛 封書 寸紙謹呈仕候 寒気厳敷候処其御地御尊公様御始メ皆々様御揃ひ益々御安康奉大賀候 私事大元気ニて勉強致居候間御休神被下候 承リ候得ば今般御尊公様ニハ勳二等ニ御昇リ被遊候由誠ニ目出度御祝申上候 徴兵遁れニ付テノ当地教師よりノ証明書ハ早々入用有之由御申越被下候得共彼ノ証明書ハ先般画学教師コラン氏ニ頼み一通貰ひ受け直ニ送リ出シ候 只今頃ハ已ニ御地ニ達したるか或ハ日本近海ならんと奉存候 先ヅ先ヅ念ノ入リ過キたる方ニテ結構ニ御座候 法律学校生徒タルニハ十一月二十一日迄若シ不得止事故アル時ハ十二月三十一日迄ニ願出ツ可キ規則ナルヲ私存ジ不申 始メヨリ別課教師ニ打チ任セ置キ其期ヲ過シ候故今年ハ生徒ニナレヌ事カト一時ハ心配致し候得共公使館原 加藤二氏ノ御尽力ニテ遂ニ去十五日首尾よく生徒ノ許ヲ得候 御序ノ折原氏へ礼状御遣し被下候ハヾ幸甚之至ニ御座候(後略) 父上様  清輝拝  御自愛専要奉祈候 皆々様へ宜敷

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