1886(明治19) 年7月30日
七月三十日附 ブリュッセル発信 母宛 封書 六月三日おだしのおてがみたしかにあいとゞきありがたくさつそくはいけんいたしましたら父上様 あなたさま御はじめみなみなさま御そろひますますごきげんよくいらせられ候よしまことにまことにおんめでたくぞんじあげまいらせ候 つぎにわたくしこといつもかわらずげんきなことにてさる二十八日まつがたさんがぱりすにちよつときておかへりなさるをさいわい一しよにべるじつくといふくににいきました このべるじつくではやつぱりふらんすのことばをつかいますからすこしもふじゆうはございません またわたしなどのおるべるじつくのみやこぶりゆくせると申ところはたいへんきれいなところにてちいさなぱりすとでももうすようなところです につぽんじんのしよせいがしごにんおります わたしは一月ばかりおるつもりです いろいろめづらしいことがございますからこのつぎのびんにくわしく めで度かしこ 母上様 ぶじ 新太拝 せつかくごようじんごようじん みなさんによろしく なつやすみにたびをするのはことしがはじめてです