1886(明治19) 年7月23日
七月二十三日附 パリ発信 母宛 封書 (前略)つぎにわたくしことはいつももうしてあげますとうりぴんぴんです またゑのけいこはおこたらずいたしておりますからどうぞごあんしんくださいまし(中略) さる十四日こちらのおゝまつりでした わたしはもう二どもみましたからことしはみたくなくふぢといふにつぽんからゑのけいこにきておるひとゝ十三日のゆうがたからがるしゆと申ちかいいなかにとまりがけにてあすびにまいりました そのがるしゆと申ところにわたしのしつておるせいようじんのゑかきがおります 十四日のひはそのひとのうちやまたそのとなりにおるひとのうちなどでごぜんのごちそうになりました ゆうめしごはそのゑかきがふうふそのほかりようどなりのふうふとわたくしたちふたりまたよそのおかみさんがひとりつがうあわせて九にんにてにわのうゑきににつぽんのつろを十二三もぶらさげはなしなどをしておるうちにぱりすではなびをあげだしましたからみんなで二かいにのぼりはなびのけんぶつをなしのちまたにわにいきました こんどはみんなでうたをうたうことにて(後略)〔図〕