1903（明治36） 年2月10日
二月十日 火 晴 来訪者 マダム・ドートルリーニス ミス・ローズ 長谷川誠也君 午後客ニ接シ夕刻橋口家ヲ訪ヒ夜食後笄町ヘ伺候 十一時過マデ旧藩ノ歴史談等拝聴 母上ト御同道ニテ帰宅 今夜興津鯛静岡ヨリ着 笄町及橋口家ヘ分配ス
本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。
1903（明治36） 年2月11日
二月十一日 水 晴 来訪者 黒田清永君及其友人黒田清二君 永田町阿婆サン 今朝父上様鎌倉ヘ御出発ノ報有リ 植木屋二人来リ雪ニテ倒レタル樹ヲ直ス 又植木屋ヲ橋口家ヘ遣リ庭樹ヲ直サセ又門口ノ通路ヲ修理セシム
1903（明治36） 年2月12日
二月十二日 木 夕方ヨリ雨 来訪者 孤児院主北川某女史 柴崎 三宅及弘光社赤崎ノ三氏也 植木屋一人来リ庭樹ニ肥ヲヤル 今日ノ重ナル仕事ハ髪ヲ苅リタル位ノ事ナリ 其他ハ只客ト語リタルノミ
1903（明治36） 年2月13日
二月十三日 金 雪 朝十時頃ヨリ学校ヘ出ル 午後出品陳列位置等ニツキ相談有リ 帰途橋口家ニ立チ寄リ夕刻帰宅 又上野日本美術協会事務所ニ於テ孤児院長北川女史ノ為聞合ヲ為シ夜報告ス
1903（明治36） 年2月14日
二月十四日 土 晴 来訪者 湯浅 小原 中村 白瀧ノ四氏 午後五時頃ヨリ十時頃マデ赤阪演技座ニ於テ松本講四郎一座ノ滑稽芝居ヲ観ル 夕刻本屋ヨリ画手本ノ奥附ケノ印ヲ頼ニ来ル 下山 櫻井ノ二人ニ命ジ其仕事ヲナサシム
1903（明治36） 年2月15日
二月十五日 日 晴 画手本五百部ノ紙数四千枚ニ印ヲ押ス事故中村手伝呉レタレドモ今日ノ十二時頃マデカヽリタリ 午後二時頃ヨリ中 種ト三人連ニテ散歩ニ出懸ク 赤阪見附下ニテ写真ヲ写シ溜池ニテ西洋道具屋ヲ冷カシ愛宕下町ニテモ同ジク道具屋一二軒冷カシ銀座ニ出テ磯ヶ谷陳列場ヲ観 新橋常盤ニテ晩食後又銀座ヲ京橋マデ往復シ新橋ヨリ俥ニテ帰宅
1903（明治36） 年2月16日
二月十六日 月 曇 午後例ノ如ク文部省ニ於テ会議有リ 夜種 綱祐ノ二人ト地蔵ノ縁日ヘ行タ
1903（明治36） 年2月17日
二月十七日 火 午後依頼サレ居ル肖像ヲ少シク描ク 母上去ル十四日ヨリ病気旁橋口家ヘ泊リ居ラレシニ今晩御帰宅有リタリ 夜赤阪ヨリ麹町ヘ散歩
1903（明治36） 年2月18日
二月十八日 水 曇 午前故伊井直憲公肖像依頼ノ為同姓直安氏来訪 午後辻氏ノ肖像ヲ描ク 夜合田夫婦来訪 十一時頃マデ語ル 本日博覧会第十部勤務ヲ命ズルノ辞同学校ヨリ廻送シ来ル 小松宮殿下薨ズ 尾上菊五郎死ス
1903（明治36） 年2月19日
二月十九日 木 晴 午前十一時頃早稲田大隈伯ヲ訪フ 肖像画ノ為也 午後中丸 伊藤二氏来訪 夜橋口家ヘ行ク 文蔵様御塩梅近頃大分宜シキ御様子也
1903（明治36） 年2月20日
二月二十日 金 晴 午前十一時頃大隈伯ノ肖像ニ着手セリ 午後郵船会社ニ永富君ヲ訪ヒ博文館ヘ行キ歌徳記ノ事ニツキ聞合ヲ為シ銀座教文館ニスチユヂオヲ注文シ夕刻田中君ト仏人某方ヘ行キ夜久保田君ヲ訪ヒ竹堂ヘ印ヲ頼ミ橋口家ヘ蓄音器ヲ届ク
1903（明治36） 年2月21日
二月二十一日 土 晩雨 和田秀豊氏 英作君ノ新着ノ画ヲ持チ来タリ 又 高木誠一久シ振ニ来ル 同人ヨリ黒杭某捕縛セラレタル事ヲ聞ク 高木ト共ニ食事ヲ為ス 夕刻ヨリ田中君ト其友井田女史ト三人ニテ八百勘ヘ行ク
1903（明治36） 年2月22日
二月二十二日 日 晴 午後秋ノ図ノ後景ノ修正ニ着手セリ 夕刻小原君来ル 夜豊川稲荷ノ縁日ニ出懸ケ曲書ノ画ヲ購フ
1903（明治36） 年2月23日
二月二十三日 月 風 午前九時頃小林萬吾来 十時半頃大隈伯方ヘ行ク 同処ニテ前約通久米ト会合 二人共伯ト昼飯ヲ共ニス 午後二時ヨリ文部省ニテ例ノ会議 夜立岡君来訪 十一時過マデ語ル
1903（明治36） 年2月24日
二月二十四日 火 晴 学校ヘ行キ競技成績ノ調査ヲ為ス 夜橋口家ニ行ク
1903（明治36） 年2月25日
二月二十五日 水 朝雨 午前藤島及ビ中川ノ二氏来訪 十一時前ヨリ早稲田ヘ出懸ケ十二時半帰宅 一時半頃ミス・ローズ来 夕刻マデ仕事ス 夜吉田林ノ紹介ニテ三上某 墨川ト云フ画師同道来訪 巴里和田氏ヨリ書状到ル
1903（明治36） 年2月26日
二月二十六日 木 午後秋図ノ後景等ヲ修正ス 夕刻井田女史来ル 共ニ食事ヲ為シ十二時近クマデ語ル
1903（明治36） 年2月27日
二月二十七日 金 晴 学校ニ行キ藤 長 中三氏ト競技成績ノ調査ヲ為シ夜ニ入リテ帰宅 今夜和田三造来訪 製作中ノ秋図ナド覧テ帰ル
1903（明治36） 年2月28日
二月二十八日 土 曇 来訪者 平岡之隆氏及宇和川 岡野 小林鍾 午前十一時頃ヨリ正午マデ早稲田ニテ仕事ス 午後例ノ秋図ノ風景ノ部分ノ修正ヲ為ス 夜所蔵ノ写真ノ片附方ナドニテ直ニ十二時
1903（明治36） 年3月1日
三月一日 日 曇 夕刻ヨリ雨 午後二時頃ヨリ夕刻マデ安藤来談 又中村次郎トモ安藤ノ来ル少シ前ヨリ一時間計語ル 夜食ニ合田ノ妻君ヲ招ク 食後合田ヲ始メ子供一同来ル