1900(明治33) 年3月25日


 三月二十五日 (百草園紀行)
 今朝方は大分雨が降つた 九時頃にぼつぼつ一人起き二人起き皆床を出て直にめしを命じたが飯を済ませ勘定をして宿屋を出る時は早十一時過ニ為つた 府中の町中での立派なものと云ふのは国魂の社であるらしい 此の社ハ武蔵の国といふのを神としてまつゝてあるのだそうだ 社の有る処ハ杉森の中でいかにも神様のありそうな処だ 社殿の構造も悪くは無い様だ 只拝殿の屋根が柱の高さに比べて大き過ぎるやうだ 此の国魂の社の境内を通り抜け右の細い道に出てこれより川を指して進む 河原ニ出る手前で道は(以下不記)