1914（大正3） 年10月21日
十月二十一日 水 晴 午前九時半頃迄ニ審査員一同学士院会議室ニ参集 午後二時頃散会 帰途国民美術ニ寄リタリ 晩餐時新納謙助氏ノ妻君 子息ノ件ニ付来レリ 要談了リテ研究所ヘ行キ授業セリ
本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。
1914（大正3） 年10月22日
十月二十二日 木 晴 夜十時前ヨリ雨 午前十時頃小林女史入来 半時間後照子及来合セタル森岡氏ト四人ニテ四谷古物評定所ヘ赴キ三時過迄縦覧セリ 同所ニテすしノ御馳走ニ預リタレドモ大分空腹ヲ覚ヘタレバ見附外ノ牛屋三河屋ニ上リ日没頃帰宅ス 今夜九時寝室ニ入ル
1914（大正3） 年10月23日
十月二十三日 金 午前雨 昨日ヨリ冷気加ハル 午前登校 直ニ校長室ニ到リ露人入学志望者ニ面会シ其作品ヲ覧ル 授業後岡田 小林ノ二氏ト精養軒ニテ午餐 三時頃帰宅 渡邊 大給 小林鶴子ノ三氏ニ面接シ五時半頃ヨリ三河屋ヘ赴キ九時頃帰ル 大給 大槻ノ二氏待受居タリ 午後五時三河屋ニテ文部次官ノ招待会 文展事務所ヨリ「其日のはて」ノ図買上ノ内談ヲ受ク
1914（大正3） 年10月24日
十月二十四日 土 晴 午前十時頃岩村君来訪 洋行土産紀念品ヲ贈ラル 又大阪赤松子来ル 岩村君ト午食ヲ取リタル後須山 白瀧 太田 宮島ノ諸氏ヲ引見ス 晩食後青年会館ナル国民美術協会ノ講演傍聴 十二時前帰宅 文展審査結果発表
1914（大正3） 年10月25日
十月二十五日 日 曇 午前中訪客 小川 當舍 近藤 岡ノ諸子 又内輪ニハ飯島ふみ及智子殿入来 午後二時頃午食ヲ取リ後植木屋ノ指図ヲナス 晩食後照ト天神様ニ久シ振ニ参詣セリ 櫻井随行
1914（大正3） 年10月26日
十月二十六日 月 晴 午前田中文子殿 午後山内家巻浦氏及清秀殿来訪 夜画室内ニテ片附モノヲナシタリ 永富氏ノ使ニ「林ノ雪」ノ図ヲ渡ス 今夜臨時博ヨリ旅費送リ来ル
1914（大正3） 年10月27日
十月二十七日 火 晴 午前十時ヨリ午後十一時ニ至ルマデ引続キ訪客ニ接ス 静子殿（十一時ヨリ二時迄） 高木ふみ子殿（二時半ヨリ一時間計） 新納美彦君（三時頃ヨリ九時） 兼清殿（八時過ヨリ十一時） 新納氏ヨリ金一百円返却 但シ七年前貸与セルモノノ内ナリ
1914（大正3） 年10月28日
十月二十八日 水 晴 午後二時頃新納時延子見ユ 三時頃行政裁判所ニ木場氏ヲ訪ヒ島津貸費生ノ手続ヲ聴キ夫レヨリ宮内省ヘ回リ近藤氏ニ面会 日没後帰宅 夜大給 大槻 荻原ノ三氏来ル
1914（大正3） 年10月29日
十月二十九日 木 曇 三越見物中雨フル 午前中ハ電話ニテ一二用談ヲ済マセ午後岡野子ニ面会シテ後三時頃ヨリ照ト三越ヘ赴キ人形ノ陳列ヲ覧ル 夜島田子来リ十一時過マデ語ル 同氏去リ間モナク橋口家ヨリ電話ニテ笄町ノ失火ヲ知ラセ来ル 乃チ直チニ二人曳ニテ走リ先ヅ父上様ノ御機嫌ヲ伺ヒ次ニ清秀殿ヲ見舞ヒ一時半帰宅セリ 鹿児島ヨリ女子出産ノ電報アリ
1914（大正3） 年10月30日
十月三十日 金 雨 午前十時頃ニ起キ村上大達子ニ面会シ十一時過ヨリ研究所ヘ行キ一時過帰ル 又中西屋ヨリ画集第二集ノ表紙見本造リ来リ届書ニ捺印シテ返ス 後チ旅行携帯品ノ取纒ヲナセリ 夜岡子来リ留守中ノ事務ニ付打合セ置ク 宝亭ヘ明日ノ料理二十六人前注文ス 鹿児島ヘ父上様ト連名ニテ祝トシテ金十円電報為替ニテ送ル
1914（大正3） 年10月31日
十月三十一日 土 雨 （京都出張日記） 午後六時半新橋発京都ヘ向フ 明一日京都ニ於テ桑博出品ノ鑑査施行ノ為ナリ 同行和田英作君 校長正木氏外数名 又不図列車中ニ旧友久保無二雄君 松方幸次郎君ニ遇フ 此日ハ母上様十週年忌ノ御祭ヲ執行スル筈ニテ数日前ヨリ其準備ヲ為シ照子ハ御手伝トシテ午前十一時頃ヨリ笄町ヘ出向キ自分ハ零時半ヨリ長谷寺内歌仙堂ヘ赴ク 間モナク神官柴田氏入来 父上様ニハ少シク御風邪ノ気味ニテ御出席ナク拝顔ヲ得ズ 遺憾ノ至ナリ 本日来会セル者ハ清秀殿家族 橋口家一同 直綱夫婦 大給夫婦及中村勝治郎君等二十七八名ナリ 午後四時頃辞去 旅装ヲ整ヘテ出発ス 照子 大給 大槻 櫻井ノ諸子ニ新橋駅マデ見送ラレタリ