本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1890(明治23) 年10月24日

 十月二十四日附 グレー発信 父宛 葉書 九月七日附母上様より之御手紙慥ニ相届き難有拝読仕候 御全家御揃益御機嫌よく被為居候由奉大賀候 次ニ私事田舍にて不相変勉強罷在候間御休神可被下候 かきかけ候画も段々首尾取れ申候 冬ニならぬ前ニ一つなりとも是非かき取度者と存折角勉強仕候 此頃ハ全ク秋にて景色もよろしく候 御地の景色もさぞかしと思ひ罷在候 霜も度々置き候 今尚一月位ハ是非当地にて勉学仕度考に御座候 巴里学校の方も稽古ハ相始メ候由ニ御座候得共生徒は三四人ニ過ずと申事ニ御座候 生徒中英人にて一人上手の者有之候得共当年ハ学校仕事をやめ独立して画を学ぶ積りの由ニ候 其他の者も上手(学校にて)の分ハ大低独立致し候様子故当年ハ学校至而淋しく相成候事と存候 私も当年ハ例の共進会の方の画を第一と致し学校の方ハ第二と致し候 併しこの冬中ハ矢張学校にて勉学の積ニ御座候 以上 父上様  清輝拝  御自愛専要奉祈候

to page top