本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1889(明治22) 年10月25日

 十月二十五日附 パリ発信 父宛 封書 (前略)去る七月中田舍ニて額面一つ画きかけ申候処余り出来よろしからず 依而今一つ考を更へ稽古かきの為人を雇ひ本式ニ勉強仕度若し其図よく出来候時ハ教師の許を得て来春の共進会へ持ち出し運をためし見申度者と奉存候 其画を相始め候得ば手本雇入代やら絵具代やら其他成就の上ハ額ふち等色々入費不少事ニてとても毎月の学資金の内より支払ふ事ハ出来兼申候 此段御承知被下度奉願上候 凡そ我百円位ハ相掛り可申奉存候 斯く金をかけ候上其図不出来なる時ハ甚だ無益なるが如く御座候得共酒色の為めに浪費するとハ違ひ骨を折てかけバかく程手習出来て此上も無き利益有る事ニ御座候間当年ハ是非共憤発仕度奉存候(後略) 父上様   清輝拝

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