1889(明治22) 年9月27日
九月二十七日附 ハーグ発信 母宛 封書
(前略)わたくしこといつもあいかわらずだいげんきにてまだをらんだニをりますけれどももうながいことハございません らいげつの一日か二日にはこゝをたつていこうとぞんじます こゝのごていすのしまむらさんといふおかたハけさほどありすがわのみやさまのおともをしてたびニおたちなさいましたからなかなかさみしきことニなりました それゆへもうぱりすのほうへかへつていこうかとぞんじますけれどもあとげつばんはるとらんさんのうちニをるころニすこしばかりもつてをつたおかねをつかつてしまつたのでこゝニきてハ一もんなしとなりどうすることもできないのです けれどもらいげつのはじめニハまたらいげつぶんのおかねがもらわれますからそのおかねをぱりすからおくつてもらつたらそのおかねでぱりすへかへつていこうとぞんじます まづそれまでハしまむらさんハおるすニなりましたけれどもやつぱりこゝのうちニごやつかいになつてをるつもりです(中略) このしまむらさんにはまいとしまいとしおせハニなります ことしもまる一とつきこゝにをります(後略)
母上様