1889(明治22) 年6月28日
六月二十八日附 パリ発信 母宛 封書 いとうげんべいのびんからおくつてくださいましたおてがみやおちややまきがみそれからいろいろなほんなどたしかにあいとゞきまことにまことにうれしくあつくおれい申上度候(中略) はくらんくわいにでてをるにつぽんのおんなをたのんでそのかほをくめさんとふたりでまいにちかきます なにぶんにもはくらんくわいのほうにまいにちあさハ九じはんか十じごろからよるの十一じまでゞていなけれバならないのですからひまがまことにすくなくわたしなんどのうちへきてくれるなどといふことハとてもできませんものですからこちらからそのおんなのうちへいきましてやつがはくらんくわいへでるまへには八じごろから九じすこしすぎまでかきます なかなかはかどりません(中略) がくこうのほうもあしたぎりでおやすみになりますから二三日うちにまたまたともだちのやつといなかにいこうとおもいます こんどいなかにいつたらなにかいなかのゑをねんをいれてかこうとたのしんでをります(後略) 母上様 新太