1889(明治22) 年1月17日
一月十七日附 パリ発信 母宛 封書 (前略)一さくばんかわぢさんがどいつといふくにからかへつておいでなさいました またご一しよにすまつてをります ひさしくひとりになつてをりましてこのごろはさみしさになれておりましたところまたまたにぎやかになりまことによいことです(中略) まづわたくしはさいわいにげんきがわいわいしておりましてまいにちがつこうにもかゞさずにでてべんきようをいたしてをりますからどうぞどうぞごあんしんくださいまし このごろハゑの大がくこうのこうしやくをきゝに一しゆうかんに二どづゝいきます ひとのほねぐみやまたにくやすぢなどのおはなしにてまことにおもしろいことでございます ほんとうのひとのしがいをそこにすゑてをいてそうしてにくなどをひつぱりだしてこうしやくをするのですからなかなかよくわかります はじめてひとのしがいのはんぶんかわのはいであるのをみたときにはなんだかいやなこゝろもちがいたしましたけれども二どもみましたらもうなんともないようになりました(後略) 母上様 新太より