本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1902(明治35) 年1月1日

 一月一日 晴 (伊豆旅行記) 羽根つきの音を聞きながらうとうとして漸く九時頃に起き湯に入り宿屋よりの馳走の雑煮を二杯平げ範頼の墓を観に行き川に沿ふて下り修善寺ホテル前の橋を渡り一と廻りして帰る 今日は少し風が有るが東京などは随分寒いだらうと思ふ 一時半頃に牛鍋を命じて食ふ 食後一同打倒れて眠る 覚めて湯に入る 間も無く夜と為る 治平老人の台湾 琉球 奥州地方旅行中の見聞談などを面白く聴く 夜食にハ猪肉を取り寄せて食ふ 謹賀新年を二十余枚書き湯に入り寝る 十一時半也

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