1904(明治37) 年9月18日 Sunday


九月十八日 晴

昨日と違つて今日は上天気で一寸熱さが戻つた。前に高等商業学校の大仕事を控へて居るので一向落つかず今朝は風月堂の菓子を携へて永峯にお見舞に出掛けたるに父上は永田町へ出勤でお留守、小供相手に待つて居る気にもならぬ。立還つたが生憎な時には生憎な事があるもんで一日不得要領でうろついてしまつた。昼後は黒田からの手紙で松方を尋ねたが不在を喰つて三田四国町に廻りポンプの護謨を取換へた丈で終り夜食には三ツ星のコロッケを注文した処が生煮へで食はれず、食後は将に着物を換へて出ようとする際に田中お梅さんに攻撃されて引留められ漸く済んで磯谷の処に行けば留守と来てお負けに空合ひが怪し気になつたので久保町まで行つて引返した。こんな頓間な日暮しはないのだが人間は一生こんな風に不運に終る事もあるのだ。

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例)「1904/09/18 久米桂一郎日記データベース」(東京文化財研究所) https://www.tobunken.go.jp/materials/kume_diary/871936.html(閲覧日 2025-04-29)