1904(明治37) 年8月30日 Tuesday 八月三十日 暁来一月振りで雨が降り出した。恰かも我々は雨乞ひに来たやうな姿である。天気は荒れ模様であるが大した事はない。朝飯後外にも出られず愈ゲーム一点張りとなる。こういう事をやるには静かで持つて来いという場処。お負けに女将は余程のアマトールらしく菓子なんか持つて来て如何にもはいりたいやうな気色を見せたが中々そうはいかない。昨日来の結果は竹沢の大敗に帰したがそれでも至極お手軽に済んだ。昼食後大分明るくなつたので一同に自転車の掃除に取かゝり宿の勘定其他を済してから最後の一戦で小石川は大分取かへした。モー発車の時刻に近ついたというので宿を出で下走り三時半の汽車に乗る積りであつたのが、自転車を入れる場所がないので次の車を待つ事になり停車場横手の茶屋で休む。五時四十分の列車は延着で六時頃漸く乗り込む。八時十分新橋着今朝のブオツフで夜食をすまし小代と二人丈自転車で帰宅したのは十時であつた。内には高等商業学校から端書が来て居て今日の会見を報してあつたが最早だめである。 引用の際は、クレジットを明記ください。 例)「1904/08/30 久米桂一郎日記データベース」(東京文化財研究所) https://www.tobunken.go.jp/materials/kume_diary/871841.html(閲覧日 2025-04-29) « 八月廿九日 曇 八月卅一日 曇 »