1904(明治37) 年8月17日

今日も目のくらむやうな暑さの中を学校に出で無事講話を終る。今夜久し振にて散歩に出る。街鉄電車で銀座通に出で玻璃コツプ及茶網を求め新橋の勧工場に入りたるに階子段の下り口で十三四の小娘が外から飛込んで行なりこまをつかまへて其旧名を尋ねた。彼れは極めて冷静で此問を却けたが、宛然前科者が旧悪を露はされたやうな心地がして直様電車に乗込んでしまつた。こふいう邂逅は今後も折々あるべきは当然なり。

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