1904(明治37) 年8月21日

今日は日曜で佐野は昼まで寝るといつて居た。十二時過小代来り品川海に涼みに行つてはどうだというので賛成し共に佐野を尋ねた。佐野は小供を連れ一同大門から電鉄に乗り高輪の柳屋から音さんといふ七十何歳の船頭が来てくれて、崩れ台場の造船所の前にかゝり泳いたり沙魚釣りやで過した。六時に一旦船宿に還り今度は吉の網船に乗る。岸近くのシビの周りに網を投し始めたるに一ト網毎に少なくも三四疋はひつかゝつて来る。其中日はくれて十一夜の月が雲間より光を漏らし涼気満袖一寸爽快である。七輪の火を起して獲物を煮て食し猶イナ、セイゴ沢山取れた。九時半より陸に向ひ肴を提げて十時半頃帰宅した。

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