1886(明治19) 年7月19日 Monday 七月十九日 朝来日影ヲ見タレドモ再ヒ雲影現出時々驟雨来ル 十一時半諸子ト共ニ艀舟ニ乗リ上陸直チニ領事館ニ至ル 館ハ港ノ高処波戸場ヨリ五六丁ノ処ニアリ 領事南氏ニ面会 当地ニテ日本旅店ナキヤヲ尋ネ金井氏不快ノ話ヲナシタルヨリ余等ニラムネヲ饗セラル 猶又後ニハ浴場ヲモ供セントノコトニテ余等刻ヲ期シ館ヲ出テ領事ノ示サレタル日本旅店横瀬ニ至リ喫茶休憩 此処ニ日本食ノ晩餐ヲ命シ去テ市中ヲ散歩ス 卑陋ノ清人雑沓汗臭鼻ヲ圧ス 又街頭ニハ車夫轎丁群ヲ為シ客ヲ引ク 十一時半台前ナル駅務署ニ至リ同行人書簡ヲ投ジ進ンデ植物苑ニ至ル 苑内清掃一点ノ塵ヲ見ズ 奇木異草見ルトシテ珍奇ニ驚カザル無シ 一廻ノ後苑ヲ出デ三時領事館ニ赴ク 浴場已ニ整フ 余等交ル交ル入浴身体ヲ一洗ス 皆快ト呼バザル無シ 謝シテ館ヲ出デ横瀬ニ至リ前ニ命シ置タル日本食ヲ喫ス 飯ハ南京米ニテ甚タ味無ケレドモ余等暫ク飯ヲ口ニセサリシ為メ誠ニ云フ可カラザルノ快味ヲ覚フ 又胡瓜揉ヲ出ス其味云フヘカラズ 食後一憩六時半旅店ヲ出デ市中ヲ歩シ買物ヲ為ス 物価非常ニ不廉東京横浜ヨリハ二三倍ニモ当ル 直チニ海岸ニ出デ六人三十銭ニテ一小舟ヲ得黄昏船ニ還ル 引用の際は、クレジットを明記ください。 例)「1886/07/19 久米桂一郎日記データベース」(東京文化財研究所) https://www.tobunken.go.jp/materials/kume_diary/869001.html(閲覧日 2024-11-01) « 七月十八日 曇時々雨来ル 七月二十日 早朝雨一行後晴 »