『大陸部東南アジアの古代木造建築を考える』の刊行

高温多湿な気候は豊かな木材資源を育む一方で、建築の永続にとっては過酷な条件となります。東南アジアの建築遺産といえば多くの人は、石造や煉瓦造の壮大なモニュメントや個性豊かな民家を思い浮かべるかもしれませんが、古代以来、寺院や宮殿まで圧倒的多数の建造物は木造でつくられてきました。

本書は、東京文化財研究所が2017(平成29)年から2020(令和2)年にかけて計4回開催した連続シンポジウムでの報告をもとに、大陸部の各国をフィールドに失われた建築の解明と失われつつある建築の保存に取り組む第一線の専門家達による、古建築はもとより、考古発掘や歴史資料などあらゆる情報源を駆使した調査研究の最新成果を集大成した、初の一篇として刊行したものです。

B5版 252ページ

本体価格3,500円(税別)

ISBN978-4-306-08574-9 C3052


◎目次・著者

序文 本書作成の背景、アジアにおける木造建築文化の地域性と普遍性 金井 健

1 古代木造建築を「考古学」から考える

1.1 考古学的および建築学的知見から見たチャンパの古代木造建築 山形眞理子、チャン・キィ・フォン/TRAN Ky Phuong

1.2  広域アンコールの居住パターンと考古遺構:民居から王宮まで  チャイ・ラッチャナー/CHHAY Rachna、ミリアム・スターク/Miriam T. STARK ヘン・ピポル/HENG Piphal、アリソン・カイラ・カーター/Alison Kyra CARTER

1.3  アンコール・トム王宮の木製遺物と建築遺構 ジャック・ゴシエ/Jacques GAUCHER

1.4  バガンの木造王宮の11世紀から今日まで ボブ・ハドソン/Bob HUDSON

2  古代木造建築を「建築史学」から考える

2.1 考古学的知見から見た北部ベトナムの古代木造建築 友田正彦

2.2 スコータイとピッサヌロークの古代木造建築 ナッタヤー・プーシー/Nattaya PHUSI

2.3 カンボジアとミャンマーにおける木造建築の伝統と発展過程に関する比較検討 フランソワ・タンチュリエ/François TAINTURIER

2.4 タイにおける木造建築技術の発展および周辺地域との相互影響 ポントーン・ヒエンケオ/Pongthong HIENGKAEW

3 木造建築を「保存」する

3.1 タイにおける木造建築遺産の保存修理 ポントーン・ヒエンケオ/Pongthong HIENGKAEW

3.2 ラオス・ルアンパバーンにおける木造建築遺産の保存修理 セントン・ルーヤン/Sengthong LUEAYANG

3.3 国際的視点から見た東南アジア木造建築遺産保存修理の現状と課題 モンティーラー・ウナークン/Montira UNAKUL

総論 東南アジアにおける木造建築史研究と木造建築遺産保護をめぐる課題 友田正彦


◎編集・発行

編集 友田正彦、金井 健、ヴァル・エリフ・ベルナ、黒岩千尋

発行 独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所

発売 鹿島出版会

印刷製本 壮光舎印刷


◎Amazonリンク

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