中央アナトリアに位置するカッパドキア(トルコ共和国)は、凝灰岩の台地が長い時間をかけて侵食された結果、変化に富んだ奇岩群を生み出し、1985年には「ギョレメ国立公園およびカッパドキアの岩石遺跡群」としてユネスコの世界遺産リストに加えられました。紀元2世紀以降、この地にキリスト教徒が移住を始めると、彼らの手によって1,000か所以上とも言われる岩窟教会や修道院が築かれ、その内壁に壁画が描かれるようになりました。

この事業は、カッパドキアに所在するケシュリック修道院聖ミカエル教会の壁画を対象に、トルコ国内外の専門機関や大学と連携しながら進められる、保存修復に関する共同研究です。文化財保存学に基づく厳密な手法を踏まえ、人文学的および自然科学的調査から得られたデータを基に、精緻な保存修復計画を策定。壁画保存修復の分野で20年以上の実務経験を持つ真の専門家で構成されたチームによって実行される本プロジェクトは、地元自治体からも高く評価され、注目を集めています。

この共同研究は、欧米諸国からも参加を要望する声がきかれ、国際的なプロジェクトへと発展を遂げています。今後は、若手専門家の育成も重要な課題として掲げ、単なる学術的な調査にとどまらず、文化財の保存および活用に携わる多くの人々に有益となる活動を展開していきます。

ケシュリック修道院
聖ミカエル教会アプシスでのクリーニングテスト

刊行物
  • トルコ共和国における事前調査報告書-文化財保存修復に係る共同研究の確立を目指して- (2023年3月刊行)
  • Church of the Saint Michael the Archagel, Keslik Monastery, Cappadocia -Preliminary Survey and Project Proposal for the Consercation and Restoration
    (トルコ共和国における壁画保存修復研究計画の立案に向けた事前調査 令和5年度成果報告書) (2024年3月刊行)
  • Keşlik Manastırı Restorasyon Projesi Raporu 2024 (2024年11月刊行)
予算

東京文化財研究所運営費交付金事業:保存修復技術の国際的応用に関する研究