日本の文化財は欧米を中心に海外でも多く所蔵されています。これらは諸外国において日本と日本文化への理解を促進し、国際交流に貢献しています。しかしながら、海外には日本文化財の保存修復の専門家はごく少数しかおらず、劣化、損傷してしまった作品に対し、適切な時期に適切な手法で処置できないことが多くあります。正しい処置がなされない場合、展示ができないことはもちろんですが、場合によっては損傷がさらに進行してしまったり、さらには修復することができなくなることもあります。
そこで、本事業では海外で収蔵されている絵画および漆工芸品を対象にそれらの作品の保存修復に協力してきました。長年続く事業で、特に作品の修復においては現在までに400点近い作品を修復してきました。具体的な事業の内容、流れは以下のようなものです。
1. 調査・研究
海外の日本文化財について所在確認をします。
各博物館の日本文化財の保存展示環境、保存修復体制、作品修復の必要性などを調査します。
現地で作品の調査を行います。歴史的・美術史的価値や修復処置の必要性および緊急性といった観点から日本作品の調査を行っています。
海外で長く所蔵されてきた作品は、日本国内で伝世してきた作品とは異なる状態になっていることがあります。また、保存展示環境も日本国内とは異なること少なくありません。そのような作品のための保存修復方法を研究しています。
2. 保存修復
保存方法、展示方法などの助言を行います。
本格的な修復が必要な作品に関しては、日本で修復を行います。
3. 情報共有
報告書などを通じ、修復やそれに伴う調査研究の成果について共有を図っています。
刊行物
予算
東京文化財研究所運営費交付金事業:在外日本古美術品保存修復協力事業