5.4 各種の写真の劣化の種類と保存法
各種の写真法による写真についての、起こりうる物質の変化を記します。今日伝わる写真像はいろいろの手法で作られているので、どのような種類の写真かを見極めて、それぞれで起こりうる変化を見据えた上で、上述のような保存法を考える必要があります。
5.4.1 白黒写真
- ネガフィルム: 画像銀の劣化、ゼラチン膜の劣化、支持体フィルムの劣化
- ニトロセルロースフィルム: 発熱防止 = 熱を持っていないか定期的に検査
- TACフィルム: ビネガーシンドローム対策 = 酢酸の除去(換気、まき直し、除去剤の使用)
- 印画紙: 画像銀の劣化、ゼラチン膜の劣化、支持体の紙の劣化
- ガラス乾板: 画像銀の劣化、ゼラチン膜の劣化、支持体ガラスのやけ、ガラスの破損
5.4.2 カラー写真
- カラーフィルム: 色素の退色、残存カプラーの劣化、色素胞の劣化、ゼラチン膜の劣化、支持体フィルムの劣化
- TACフィルム: ビネガーシンドローム対策
- カラー印画紙: 色素の退色、残存カプラーの劣化、色素胞の劣化、ゼラチン膜の劣化、支持体の紙の劣化
5.4.3 インスタント写真
残存成分の劣化・変質
残存成分の種類が多いので、変化が多様
5.4.4 プリンタ印刷物
インクの退色・変色、酸性紙の印刷用紙の劣化
5.4.5 古写真
- ダゲレオタイプ: 基板が銀板以外の場合(銀メッキ銅板)のサビ(緑青)、画像形成物質のアマルガムの劣化(像は薄い金属膜でできているので傷がつきやすい)、カバーガラス等で保護されている場合のガラスの劣化
- コロジオン湿板: 画像銀の劣化、コロジオン膜の劣化、直接ポジ像して見せる錫板(ティンタイプ)、鉄板(フェロタイプ)基板でのサビの発生、コロジオン膜は傷がつきやすい。
- カロタイプ: 画像銀の劣化、紙の劣化
- 鶏卵紙: 画像銀の劣化、紙の劣化、光があたると劣化が促進
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