裸体美人画に関する詮議

  • 東京日日新聞
  • 1897(明治30)/12/03
  • 2
  • 雑報

画伯黒田清輝氏が先年裸体美人の図を京都博覧会に出品せしより風俗上是非の議 論は紛々として一時耳目を聳動したりしが時の内相板垣伯は之を黙許したるも坊間之をハ ンケチに複写して発売するに至りたるものに向て伯は風紀に害ありと認めて発売を禁止すると同時に之を掲載 する新聞雑誌の出版物も禁止したるにより世論は茲に再燃して囂々たる事ありしが裸体美 人の図が果して風俗壊乱の虞あるや否やは終に一定する処なく殆んど有耶無耶の間に没了し居たり然るに近頃又白馬会に裸体美人の図を展覧に供したるより新聞雑誌等の出版物にも 掲載して発売するものあるに至りたるより内務省は此等に対し何分の処分を為さんと昨今協議中の由なるが裸体美人の図画を出版したるものゝ発売を禁止すると同時に白馬会の陳列を禁ずべし否らざれば一 方に之を禁止し他方に之を許すは不都合なりと論ずるもあり或は美術をして陳列するは可なるも之を模写して出版発売するは不可などと云ふ者等ありて未だ孰れとも決せず結局大臣の方針を待て決定する事 とありたる由

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