白馬会を見る(下)

  • 日本
  • 1910(明治43)/05/31
  • 5
  • 展評

△第六室 此室は参考品として湯浅君模写のベラスケスの油絵藤島君模写のシヤバンヌ筆壁画の一部其他ホンタネージ、コルモン、コラン等の素描がある何れを見ても思ひ切りの良い明快な作品で筆に些しも危気がない
△第七室 山脇信徳君の雨の夕は寒い感じが出て居る川北元英君の温室は纏まりが無くて絵具が泥のやうだ草花の写生も一段の注意を望む香田勝太君の盤台の魚は魚類の写生は却々巧妙だが遠近法の誤りで皿が逆立しかけて居るのがある山田実君の晴れたる海は海の色に遠近が無いのが疵だが更に深く研究すると面白いものになるだらう出口清三郎君の初夏の夜は余程苦心の作でも有らうが夜の感じは無い只だ画題を見て外が暗藍色で塗つてあるから夜だらう位に思ふ許り女の衣服も綿入のやうな感じがする太田三郎君の女の顔は襟止のピンが目に着いた
△第八室 小川千蔵君の少女は悪写実だ労力は大に認めるがモツト大体を見る事が必要だらう辻永君の山羊は壁に投じた屋根の影の形も面白い山羊の身体には多少の難もあるが気持の良い作である田中真作君の山の村は悪感を催す岡吉枝君の少女は顔に妙味があると云ふより可愛らしく出来て居るが少し頭と胴の釣合が失て居る
△第九室 此室には肖像画の小品が数点ある何れも黄疸のやうな色で形が崩れて居る片多徳郎君の風景五種の中では牛が面白い住谷宗一郎君のサイネリヤは色も調子も気持が良かつた若し労作の程度と賞賛とが一致するものならば佐藤均君の夏の池畔などは最も賞賛しなければならぬものであるが…

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