美術雑俎

  • 日本
  • 1910(明治43)/05/13
  • 5
  • 雑報

△白馬会の展覧会は十一日から上野公園に開かれた出品目録さへ未だ出来ないのに場内には熱心な若い人達が佇んで首を傾けて居る△出品点数は八百点程集まつた其内から約五百点程選つたと云ふことだが未だ随分敬意を表したいのがある△量が余り多いのと小さな画を眼繍鳥押しに並べたとで少なからず観覧者の目を労らす出品者の側から云つても有難くない並べ方だ△黒田氏の出品は小品計り青山と云ふ人がアイヌの家庭を描いた大作がある藤島、湯浅両氏の作品にも粗雑な筆の中に面白いのがある有象無象共が又直ぐ真似を初めることだらう△ヴエラスケスの模写の大きなのがあるコランの素描もある明治三四年頃に西洋人が描いた日本人の肖像や風俗画もある△兎に角量の多い事と昔流行つた所謂紫色が敗残物のやうな有様になつて総ての研究が自由になつたのと印象派気取の点々弗々の数が多くなつたのとが目立つた

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