白馬会の紀念展覧会

  • 都新聞
  • 1905(明治38)/09/28
  • 5
  • 雑報

予報の如く去る二十一日より開きたるが今や制作殆ど出揃ひ会場も 残る方なく整頓したり茲に其重なる新作品を挙ぐれバ会員の分にてハ和田英作氏の衣通姫、小林萬吾氏の静、中沢弘光氏の 冬木立及び雪景、山本森之助氏の湖上の吹雪、岡田三郎助氏の女神、小林鐘吉氏の風景、黒田清輝氏の肖像及小品数点にて会員外にハ和田三造氏の大作帰牧、橋本邦助氏及び森岡柳造氏等の作品数点あり又別に今回帰朝せる小林千古氏の作品数品あれども潔作と認むべきものなく其他北蓮造氏ハ従軍中又白瀧幾之助氏は米国遊学中にて共に出品なく湯浅一郎氏の制作ハ水彩甚だ多く油絵ハ僅に巫女の一図あるのみ而かも例 年の作に及ばざる事遠く長原止水氏の停車場も亦佳作にあら ず若し其れ三宅克巳氏の水彩に至つてハ例に依つて例の如く要 するに今回の展覧会ハ例会に比して甚だ振ハざるものゝ如し然る に其間にありて大に光彩を放つハコランの詩と題する大作にして例の流 麗なる筆致の中に苦心の痕見え甚だ感歎に値す是れ林忠正氏 が所持の骨董品と交換したるものゝ由なるが此の如き佳作 の出陳せられしハ喜ぶべし尚ほ今回ハ創立十周年の紀念として会員諸氏 の旧作をも併せて陳列したるが多くハ甞て一たび展覧会に出品 せられたるものゝみ中に就て黒田氏の作品最も多く其巴里博覧会にて銀牌を得たる湖辺の美人、在仏中サロンに出品したる読書の婦人、小督物語製作當時のエチユード等を始め佳作頗る多 し

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