画界近事

  • 毎日新聞
  • 1898(明治31)/12/28
  • 1
  • 雑報

◎住友氏と洋画 大坂の豪商住友吉右衛門氏は平常深く意を美術に寄せ殊に洋画 を愛するよしなるが此程金千円を投じて白耳義より遥かに我が白馬会に寄せ 来り先頃の同会展覧会に出陳せしウヰツトマン夫人筆牡丹の大幅を購ひたりと東都の素封家中能く此種趣味ある嗜好を有するもの幾人 ぞや
◎博物館と洋画 帝国博物館にては前記夫人の良人ウヰツトマン氏筆月下の水汲婦の額を数百金にて買上げたりと是れにて海外より遥々出品の甲斐空しからで好評の上に夫々買取られたれば白馬会にても早速 右の代金を両氏の許に送りたりと
◎外山氏の肖像 帝国大学にては総長歴代の肖像を油絵にして保存し置く例なるが前総長外山正一氏の分は 先頃より黒田清輝氏に其揮毫を嘱せしに此程出来既に掲げ済みになり しと又同画伯は兼々住友氏の依頼ありたる富嶽の図を写生の為め駿州 地方に旅行するやに聞く

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