去六日来上野公園第五号館に開ける白馬会第三回展覧会は作家四十余名其多くは一人にて二十枚内外を出だしたれば点数三百六十と 注せらる海辺田間の小景は数ふべくもあらず景色人物ともに大作亦多し先づ観客の眼を惹くは此等の大物にて美術学校学生中優等の評ある広瀬勝平氏の磯、和田英作氏が今年の得意物と聞ける三保松原と富士川との両富岳など入口近くに在り和田氏の美人の物思いづれ技 巧以外の評判もあるべきにや湯浅一郎氏の農家と藤島武二氏の納涼とは今は其地を余せるのみ十四五日の頃掲げらるべし此二氏に対する一方には小林萬吾氏の農夫晩帰白瀧幾之助氏の樵夫の小休み相並んで竪長の大作なり此間の一区 画は黒田清輝氏其主人たるが如く例の小督物語正面に懸けられ物淋し樹下の涼其他の之に次ぐ者あり左右の富士及海辺河辺夫々の眺望五枚を連ねたる横長の額四個いづれもおもしろし此一区画 の前後左右に菊池鋳太郎氏の彫刻大島圭介（銅）大倉喜八郎（石膏）の半身像立 てり共に久米民之助氏が夫々へ寄贈の為め氏に製造を托したる者なり此中部 を過ぎて奥の方には久米桂一郎氏が片瀬の残▲骨折られたる作と見 られ、小代為重長原孝太郎中村勝次郎氏等の景色画あり安藤仲太郎氏は大作ありと聞けど未だ見 へず北連蔵氏の葬ひは下図ながら出来の待たるゝ大作なり列品の間に海 外画伯の新作七八個あり昨秋閉会間際に着せし伯耳義ウイツトマン夫妻の 画を初め仏国の大家コラン閨秀画家カセツト及ウオーター、グリフイン等の油絵パステル木炭画等あり此等は西園寺侯及び過般仏国より帰りし杉武二氏 （杉氏の男）会員久米氏等所蔵の秘幅にして同好者の足を停むる 此にも少からず