洋画界の新消息(白馬会)

  • 毎日新聞
  • 1896(明治29)/05/27
  • 1
  • 雑報

今日の我に於ける洋画界は初期に属す、新派と云ひ旧派と呼ばるゝ、批評は批評、我れは我れのみ、今の時は大に修めて大に画き、而して大に斯界の発達を謀り勢力を高むべきなり、決して外に意を介して内を忘るゝが如き余暇ある時ならずとは何れの辺に起りし慨言にや、
頃日世の旧派と目する小山正太郎、山本芳翠、新派と称する黒田清輝、久米桂一郎諸氏の間に起りぬ、終に我れ我れは同感の士と精神的の結合を為して此目的を達すべしと茲に新団体は生れぬ、
主義は自由平等なり、新旧もなければ南北もなし大に学びて大に働かん人は即ち一味徒党の士たるべし、形にのみやかましきは我々の執らざる所なれば、此会には規則もなし役員もなし、符号代りに白馬会と称せんのみと、
白馬とは如何なる意味にや、試みに「しろうま」と訓読せんか、葡萄の美酒に耽りて独り楽まんは我れの意にあらず、我れに階級なし門戸なし流派なし、しろうまを傾けて社会平等を謳はんかなどの意味にもや、我れは知らず、
今日に此美挙なくてやは、此新結合の結果展覧会などいづれ開かるゝなるべし、鴎外のぬしも大に賛成の意を表せしとか(芳)

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