白馬会案内記(七)

  • 四絃
  • 都新聞
  • 1903(明治36)/10/24
  • 1
  • 展評

第六室ハ北蓮蔵の吹笛が大作丈に人の目を惹くが却て岡田三郎助の仁和寺の裏門の方が面白い様に思はれる、古き門の上に出てゐる木の枝などの描法は実に巧い、然し石に射つた太陽の色ハ何様で有らうか、
中丸精十郎の森の道ハ木の葉の一つ一つに距離の説明を付けて有て色の柔かい何と無く奥床しい画だ、然し第三室の細径が之よりハ優つてゐる様だ
内野猛の秋の夕ハ空と森との離れ具合が極めて好い画で手前が些か足りぬ様だ、
磯野吉雄の月空の色が下の方が紫過ぎてゐて打よせた波ハ手前に有る船よりハ余程手前に出て来てゐる即ち調子をはづしてゐる、船の形も正確なものとハ思れ無い、然し同氏の画の中でハ先づ之が好い方で有らう、
小林萬吾の森ハ森の描き方に中々苦心の痕が有る画だ、第四室に有る夕景よりハ之の方が好い、

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