白馬会案内記(五)

  • 四絃
  • 都新聞
  • 1903(明治36)/10/22
  • 1
  • 展評

第八室ハ水彩パステル類の部屋で青木繁の与茂都比良佐加と三宅克巳の雨後の森ハ五の室の重なるもので有る。
よもつひら坂ハ日本神代の巻の一部を描いたもので常世国と高天原との境を描くので有るから苦心も多少有つたで有らう。然し韋陀の研究の方が出来上らぬながらも面白い処がある。
三宅氏の雨後の森は他の幾十枚の水彩の中で際立てゐる作である。然し森の木の葉の間に空のすみてゐる色は何とか今一工夫欲しかった様だ第九室でハ同氏の旅の紀念中々面白い中でも香港などハ最も好い様で有る。
宇和川通喩の壁画下絵ハ北浜銀行のに用ゐる為に描いたもので色と云ひ、組立と云ひ実に見事なもので有る。
第十室ハ中沢弘光の水彩東海道で持切つてゐるが昔名所の東海道を新しい着眼で描いたので有るから中々面白いのが多い、然し全体から云ふと色鉛筆のスケツチの方が面白いものが多い様で有る、之の様なものを印刷にやつて見るものが有れバ又一層面白い事で有らうと考へるが、今の日本でハ未だ其様な贅沢ハ云へないだらう

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