黒馬散人に告ぐ

  • FH生
  • 中央新聞
  • 1901(明治34)/11/04
  • 1

編輯総長机下 僕は多年モデルを使ツてゐるけれども、言ふべからざると言ふやうな大袈裟な弊害はまだ一ツも見出さない、と言ツて何も僕は絶対的、弊害はない、とは言はないのである、成程黒馬散人の云ふやうに、本年の白馬会は或は災難が幸福となツたか知れない、が併し白馬会は決して或る会のやうに、年々収支の償はないやうなことはない、何うやら償ツてゐるので、イヤ或る年は大分余金も出来て、今では基本金さへ出来てゐるではないか、君は白馬会の内部の帳尻を良く知ツてゐて言ふのか、何の恨みがあれば白馬会に対して、附会の説を公表して、嫉妬臭く中傷しやうとするのか。
況して(甲乙ステツキを延ばし欄を越え、腰巻をひきおろし)など何時何所の誰が其様乱暴な賎しむべきことをしたのであるか、其為に番人が付けてあるものを。
止めよ君!、サタン的妄なる言を、想を遠くに置け、眼を高きにつけ、神聖にして犯すべからざる美術の真髄を悟れ!

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