白馬会裸体画の板囲

  • 不忍生
  • 国民新聞
  • 1901(明治34)/10/31
  • 3
  • 雑報

一度幕を張らしめられてよりは本年の大作も少なからず見栄を失ひたりとて其処置 を難ずるの声到る処に聞こゆるに當局者は尚ほ廿九日午後突然会の書記近藤知敬氏を召喚したるを以つて黒田清輝氏代りて下谷警察に出頭書記は一時の傭人にして会には何等の責任を負はず 若し負擔すべき責のあらば会全体を代表して自分其法に服さんとあり し処署長は改めて謂ふまでもなく曩に裸体画の腰部を覆はしめしは必竟風俗取 締の上より來りしものなるに其主旨を解しながら前日來密 に公衆をして之を観覧せしむるは當然違警罪を以て問ふべきにより実は書 記を拘留せん筈なりしとありしかど結局交渉の上場内の裸体画は悉 く板囲を以て其下部を覆はしめられたり尚ほ警察署の所謂公衆とは前日西園寺侯が来観の節他の入場者は退けて特に侯 一人之が鑑賞を試みたりしを折から場内に在りし警部の一人 が之を報告したるに起因すと云ふ(不忍生)

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