白馬会瞥見

  • 香夢生
  • 二六新報
  • 1900(明治33)/10/26
  • 1
  • 展評

△山本森之助氏の「曲浦」「秋景」 色彩の点からいふても、画きコナシの点からいふても申分がない、上 出来である、氏は画境を見出すことがナカナカ巧みだ、景色は尤も手 に入ツたものでヨク天然を説明して居る、シカシ「噴火口」黄色の「風景」の如きはアマリ写真的 で画としての面白味よりも、名所絵として観察したやうな弊がある、△原田竹 二郎氏「雪景」「梅園」 ナカナカ面白く出来て居るが色に一種の癖があるやうに思れるが、 ■■■■(判読不能)■■■■、△中沢弘光氏の「夏」 美人が朝顔の鉢を運ぶ所を半身に画いたので、女の顔に光線の反射せる工合もナカナカ面白いが、女の姿勢が自動的に鉢を持運ぶ姿勢ではなく、鉢を持ツて立ツて居る としか見えないやうだ、其から後景が余り叮嚀過ぎた為め女の顔が見栄がない、細く言へば鉢がハリコのやうに見える、又中景にある鉢や如露はアマリに小 さく見えて殆んど玩具の如とき感がある、△同氏の「夏雲」「遠山の曙色」 二枚とも篦絵だが色彩精巧趣味津々、確に北蓮蔵氏のに優ツて居る、殊に 「夏雲」の如きは空の模様や点景人物の活動が面白い、恐らく氏 の作中第一だらう、△玉置照信氏の作 総べて画題もよく、手際もあるらしいが筆の下し方 が不叮嚀で、一として熱心に研究したアトがなく、何れも請負仕事のやうに画 いた気味がある、モ少し誠実に筆を下したものが見たい

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