よみうり抄

  • 読売新聞
  • 1898(明治31)/10/27
  • 4
  • 雑報

◎白馬会ハ一年前に比して一般に進歩したに違ひないが親玉の失敗 が少しく人気を挫くかと思はれる夫れに二三年前とハ著しく旧派に似た 傾がある絵具といひ図様といひ確なる例証である黒田氏の作につきて言バ昔語りハ言ふまでもないが或人の褒た寂寥の図ハ左程にハないしかし當時仏国 のゼロンの意匠が先づ彼様ものであらう海辺に処女の寝転んで居る図 ハ面白い日本画を見れバ美術院連中ハ確かに西洋画になりさうだ が流石新思想を持て居る丈に面白い物が比較的に有る併し今 日の所でハ荷が勝て居ると云のハ適評である其点がまた我々の希望 を属する所将来日本画界を独占するであらうと待つ所以である新思想 なき他の画界に至てハ見物するまでもない兎にも角にも今日過渡時代に於てハドシドシ種々な物を画くべく試るべしだ其中にハ自然発明する点もあり永存すべき大作も出来るであらう日本絵画の関門を開いて新しきに向ふハ其の作品の如何よりハ當時代に必要の精神 であるに相違ないから一回毎に目先き変はりたる作につき酷評を下すなどハ先 づ絵画に忠ならざる者と見て差閊なからうと某局外家ハ語る

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