白馬会瞥見

  • 香夢生
  • 二六新報
  • 1900(明治33)/10/27
  • 1
  • 展評

△森川松之助氏の「夕月」 夕月の風情がイカニモよく見える、色調もサエザエしい色を使用ツて 一種の特色がある△木元鐘吉氏の「水辺の初夏」 研究の日の浅いものの画としてはナカナカの上 出来で、十分望がある、位置の撰び方も着色の工合も先づ無難だが、前景の中洲が水の上に漂ふて居るやうに見えて少し可笑しい△ 三宅克巳氏の水彩画 水彩にて景色を画くモーチブをヨク知ツて居る、氏位に水画を画 く人は日本には恐くなからう、「初秋」「秋」「ハムステツドの夕」「晴模様」「秋の日和」などは上出来 だ、氏の欠点をいへば変化に乏しく、千篇一律で版にしてあるやうな感じがある、 「冬の林」の如きは全で海底を画いたものゝやうにしか見えない、△オールリツ氏の水彩画 豪宕遒勁で少しも繊巧なところがない、「萬安の庭」はスケツチとしてナカナカ面白く実に巧みなものだ、 「伊香保の湯本」翠緑滴らむばかりの青葉を通してモレ来た光線の工合は言ふ に言はれぬ面白みがある、点景人物も亦何れも活動して居る△同氏のパステル 都 合三枚あるが「楓」と題せる■■■■(判読不能)■■■■けて居る所を画いたので、ツマラヌものゝやうに見 えるが、室の撰び方や光線の取り方や色の配合が余程面白い(つゞく)

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