透過近赤外線画像には、キャンバスの中心に1本、人体を含みこむ左右両脇に1本ずつ縦の線が認められます。画家にキャンバスに向かったときに、モティーフを描きこむ場所を確定するために引いたものと考えられます。この図でも、3種類の画像を比較して、全身のプロポーションに大きな違いは認められませんが、近赤外線画像には両腿部に複数の線が認められ、大腿部の量感を決めるのに画家が試行錯誤したことがわかります。また、《情》という題名にふさわしい長い乱れ髪は、透過近赤外線画像では認められず、油彩による制作の際、画家が描き加えていったことがわかります。


