古河市兵衛の片腕であった木村長七を描いたこの肖像画は、古河合名会社の依頼によって制作されたことがわかっています。依頼された肖像画でありながら、この作品の反射近赤外線画像にはグリッドが認められません。下絵を作成し、本制作の際にカンヴァスにグリッドを引いて、下絵を等倍に拡大していく手法を用いなかったことがわかります。また、カラー画像では両頬が同じ色を用いてモデリングされているように見えますが、左の頬よりも右の頬がより強い蛍光反応を示しており、両頬のモデリングに用いられた絵具が異なる性質のものである可能性を示しています。