屏風は古代、中国からもたらされたもので、もともと風をよけるための建具として使われていましたが、その表面に絵や書を描くことがおこなわれてきました。特に江戸時代には数多くの屏風絵作品が作られました。また屏風全体に金箔を貼った金屏風は光を反射し、室内を明るくする効果もあります。屏風の主題には、花鳥図、山水図、物語図、歴史的な出来事を描いたものなど様々なものがありますが、一年に一度の特別な祭礼も描かれています。

この二つの金屏風は、滋賀県大津市の日吉大社の祭礼の様子を描いたものです。比叡山、琵琶湖などの自然の景色の中に、日吉大社の殿舎と神輿の行列が色鮮やかに描かれています。山王祭は1200年前から現在にも続く伝統あるお祭りで、祭のクライマックスである、神輿を船に乗せて琵琶湖を巡幸する船渡御の様子も描かれています。この事業で修復を行った、ハンブルク美術工芸博物館の屛風は縦104cmの中屛風、ヒューストン美術館の屛風は縦151cmの本屛風です。同じ画題の作品を見較べると、神事や建築の描写、商店や宴会の様子など、風俗表現の変化と多様性を見ることができます。画風や描写されている建築物などから、ハンブルク美術工芸博物館の作品がやや古く17世紀前半、ヒューストン美術館の作品が17世紀後半の制作と推測されます。

「日吉山王祭礼図屏風」
六曲一双 17世紀 ハンブルク美術工芸博物館蔵 平成11年度修復
「日吉山王祭礼図屏風」
六曲一双 17世紀 ヒューストン美術館蔵 平成19年度修復

作品紹介