日本には古代から数々の絵巻物が制作されてきましたが、この絵巻という絵画形式も他の文化と同様にもとは中国からもたらされました。絵巻物の表装のことを巻子装(かんすそう)と言います。巻子は紙や絹を横に長く貼り継いで作られます。巻子は上下の長さには制約がありますが、横には制約がなく物語や描写内容が続く限り長くすることができます。平安時代以降、文章と絵を交互に表した、数多くの物語絵巻が作られました。

ここで紹介する鼠草紙は土佐光信が描いたと伝えられ、縦が16cm、長さが4m31cmの小ぶりな絵巻物で、「小絵」と呼ばれています。貴公子の姿になった鼠が美しい姫君と結婚し、幸せに暮らしていたところ、鼠であることが露見し、その家の飼い猫に食べられてしまう、というお伽話が表されています。土佐光信の画風を伝える優品として知られています。

鼠草紙画像
「鼠草紙」
一巻 15世紀 ハーバード美術館 平成10年度修復

作品紹介