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調査研究紹介  2.色の指示書き

  彦根屏風に描かれている15人全員の着衣部分色の指示書きが存在していました。絵具の剥落により目視でも「六」(=緑青)、「コン」(=紺青)の2色は確認できていましたが、さらに近赤外線撮影調査により絵具の下層に、「朱」「アサ(キ)」(=浅葱)「エン」(=エンジ)「ヒハ」(鶸色、明るい緑色)「キ」(=黄色)「ちゃ」(=茶色)「くん上」(=群青)の7色の色注が存在していることが記録でき、合計9色の色注が確認できました。
 彦根屏風では15人全員が、裏地のある袷の小袖を二枚重ね着しており、その表裏の色について指示書きが書かれています。下の画像のように、第一扇の椿を持つ少女は、内側に緑色で裏地が茶色の小袖を着て、表側に銀青地に朱色の稲妻文、裏地が浅葱色の小袖を重ね着し、臙脂色の細帯を締めていることがわかります。また下図のように複雑に入り組んだ衣装文様については、同色の指示を多数記したもの(第一扇椿を持つ少女「朱」13箇所、第四扇文を書く女「エン」14箇所、第五扇口元を隠す女「朱」25箇所)が確認できました。塗り間違いを避けるための配慮と考えられ、複数の人間が本図制作にかかわっていることも推測されます。

第一扇 椿を持つ少女 着衣部分 同左 近赤外線画像 5色の指示書き
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