東京文化財研究所は、令和7(2025)年度文化庁緊急的文化遺産保護国際貢献事業(専門家交流)を受託し、「スーダンの被災博物館の保存・修復方針の策定に係る事業」を進めています。このたび本事業の一環として、スーダン共和国から4名の文化遺産専門家を日本に招き、1名にはオンラインで参加いただき、令和8(2026)年2月24日から27日にかけて東京・京都・大阪において専門家会議およびコンサルテーション・ミーティングを開催しました。会議には、スーダンの関係機関、日本の文化財関連機関、UNESCO、ICESCOなどの国際機関が参加し、戦闘が続くスーダンにおける文化遺産の危機と、今後の協力の方向性について意見交換を行いました。
議論では、スーダンの文化遺産を「スーダン自身の視点」に基づいて理解し、同国の専門家や地域コミュニティの知識・優先事項を尊重することが、持続的な協力の前提であることが改めて確認されました。また、博物館・遺跡・文書館などが直面する深刻なリスクや、文化遺産専門家が置かれている厳しい状況について強い懸念が示されました。さらに、UNESCOおよびICESCOの支援の役割、在日スーダン共和国大使館やNCAM(国立古代遺跡博物館)をはじめとするスーダン側機関の尽力、日本の文化庁・東京文化財研究所・国立民族学博物館・JICAなどとの対話の成果が共有され、今後の協力を深めるための基盤が築かれました。
本会合の成果として、参加者はスーダンの文化遺産保護と復興に向けた共通の認識を整理し、共同声明「スーダン文化遺産保護専門家会合 確認された主要原則に関する報告書 (2026年2月24〜27日 東京・京都・大阪)」「スーダン文化遺産保護専門家会合 今後の協力に向けた提案行動報告書 (2026年2月24〜27日 東京・京都・大阪)」を取りまとめました。本声明は、参加者が、事業関係者と今後の活動のための共通認識として記録を残したものであり、記載された知見・解釈・結論は、必ずしも各組織や政府の公式見解を示すものではありません。しかしながら、本声明は、戦闘下にあるスーダンの文化遺産の現状を、同国の専門家・地域コミュニティ・国際機関・日本側関係者が直接対話しながら共有した、学術的にも実務的にも極めて貴重な一次的記録です。スーダン自身の視点を中心に据えた協力のあり方、文化遺産が直面する具体的なリスク、そして国際協力の方向性について、多様な主体が同じ場で認識をすり合わせた点に、本声明の大きな意義があります。
本声明は、スーダンの文化遺産保護と復興に向けた国際協力の進展を記録し、今後の取り組みを進めるうえでの重要な指針となることが期待されます。